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ぼっこが入園する☆


ぼっこが生まれて、4度目の桜が咲く。




家から歩いて3分ほどのところに、川があり、川沿いには桜並木が続いている。


数百メートルの長さだけれども、それはそれは見事な桜の花のアーチで、見上げれば、空の青さが多いのか、桜の花びらが多いのか、わからなくなってしまうほどだ。




里帰りから戻り1か月。少し、勇気を出して、ぼっこを抱き、桜並木を歩いてみる。


すると、朝の光がまぶしすぎるのか、目をきゅと結んでしまう。


「桜だよ。きれいだねぇ。ぼっこ、生まれて、おめでとうって桜が言ってるんだよ」と、桜の花で頬をくすぐってみたり、犬の散歩中の人が少し遠くに見えるくらいしかいないので、ちょっと大きな声で”隅田川”を歌ってみたり。。




するとね、笑っている。笑っている。口元が確かに笑っている。


頬の透き通る白さに陽の光がサッと射し込んで、それがスッーっと、空に向かって返っていくんだ。




ぼっこは桜を見てくれないけれど、お母さんは毎日、毎日、この桜咲く小路を歩いたんだ。そして、ぼっこが笑っているのを見て、お母さんは踊った。もちろん、心の中でだよ。。




2度目に桜が咲いたときはとにかく駆けた。走るのが大好きで、駆けて駆けて、桜なんか見ずに、すぐに、アーチを抜けてしまうんだ。そうかと思えば、木と木の間にどっしり腰を据えて、砂をつかむ。あるときは早く、あるときはゆっくり。あるときはたくさん、あるときはほんの少し。そして、さらさらと手から流れ落ちる砂の速さと土のにおいを感じている。何時間も何時間も時計が止まっているかのように。。


おかあさんはすぐ隣にある、半分壊れた空色のベンチに座って、ぼっこを見ている。傾いているから半分すべり台のよう。世の中にはこんな時間もあるものなんだと、くすっと笑ったんだ。




3度目の春は水疱瘡にかかっていた。


だから、その年は花見には行けなかった。でも、そのかわりに、1日に何度もドライブしたね。桜咲くところをさがして、街中をぐるぐるとまわった。そしたらね、ある曇った日の朝、突然、言ったんだ。「あっ、なんか、お花が咲いているよ。いっぱい」って。


そうだよ!去年もおととしもぼっこの頭の上で桜は咲いていたんだ!やっと、気付いてくれた。って、ん?、いやっ、ぼっこがしゃべった。「きれいだね。ピンクだよ。ピンク」と続く。考えて見れば、こんな長い言葉を話したことはなかった。美しい景色は、時に、”言葉のポンプ”となる。


そして、そのとき、灰色の空は見ていなかった。その瞳は桜の花だけをしっかり捉えていたんだ。子供は見たいものだけをすくっと見れる眼がある。おもしろいフォーカスを持っているなぁと思う。




そして、今年。4度目の桜が芽吹く。でも、気分は少し複雑だ。ずっと、つぼみのままでいてほしいと願う。けれども、今年は桜の開花が早まるのだという。花の嵐が引けて、花びらが風にさらわれてしまうころ、ぼっこが入園する。この手を離れて始めての社会に出る。


ずいぶん、さみしくもあり、不安でもある。けれど、この陽気に少し力を借りてみて、ここにある桜並木のように両手をアーチにして笑顔で見送ることにしよう。









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